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ゼータ電位

処方の安定性や保存期間向上と、調合時間の短縮、コスト削減のためのゼータ電位測定

ゼータ電位は、粒子間の静電気または電荷の反発/引力の大きさを示す尺度であり、安定性に影響することが知られている基本的なパラメータの1つです。ゼータ電位の測定は、分散、凝集、軟凝集の原因に関する詳細な洞察をもたらし、分散液、エマルション、懸濁液の処方の改善に応用することができます。

粒子を取り囲む液体層は、イオンが強く結合している内側の領域(Stern層)と、あまり強く結合していない外側の領域(拡散層)の2つの部分として存在します。拡散層内には、イオンと粒子が安定した実体を形成する想定境界があります。粒子が(重力などで)移動すると、境界内のイオンがそれを移動させます。境界を超えたイオンはバルク分散媒に留まります。この境界(流体力学的せん断面)におけるポテンシャルがゼータ電位です。

図1:ゼータ電位の模式図

新製剤の導入スピードは製品の成功の鍵となります。ゼータ電位の測定は、候補となる製剤の数を減らすことで、安定性試験を短縮する方法の一つであり、その結果、試験時間とコストを削減し、保存可能期間を改善することができます。

水処理においては、ゼータ電位測定を用いて、リアルタイムで投与量制御を最適化することで、化学添加剤の費用を大幅に削減できます。

ゼータ電位は、セラミックス、医薬品、医療、鉱物処理、電子機器、および水処理など、幅広い産業分野で重要な用途があります。

ゼータ電位測定

スラリー系の分散安定性評価(ゼータ電位) コロイド系のゼータ電位 抗体、バイオ系の安定性評価(ゼータ電位) インク粒子の凝集体評価(ゼータ電位)

ゼータ電位の測定方法には、以下のようなものがあります。

測定方法 詳細
顕微鏡電気泳動法 顕微鏡電気泳動法は、個々の粒子が顕微鏡で識別できる場合に、直接粒子を観察しながら電気泳動移動度を測定する方法です。暗視野にすることで散乱光が観察でき、小さな粒子径でも測定が可能です。
レーザー・ドップラー電気泳動法(電気泳動光散乱法) レーザー・ドップラー電気泳動法は、電気泳動移動している粒子にレーザーを照射し、散乱光の周波数変化(ドップラー効果)を利用して電気泳動移動度を求める方法です。一般的なコロイド系のサンプル並びに、タンパク質・ポリマーなどの分子コロイドのゼータ電位も測定が可能です。
超音波振動電位法 超音波振動電位法は、濃厚分散系のゼータ電位が測定可能です。分散系に超音波を伝播させると、荷電粒子とイオン雰囲気の中心にずれが生じ、周期的な分極を引き起こします。この分極は超音波振動電位(UVP)とよばれる交流電圧を発生させます。このUVPよりゼータ電位が計算できます。

電気浸透効果による影響

電気浸透流は、粒子の電気泳動速度に影響を及ぼし、ゼータ電位の測定結果を誤らせる可能性があります。そのため、電気泳動法によるゼータ電位測定では、電気浸透流の影響を補正する必要があります。

電気浸透流の影響を補正する方法としては、以下のようなものがあります。

  • 電気浸透流を抑える特殊なセルを用いる。
  • 電気浸透流と粒子の電気泳動速度を同時に測定し、両者の関係式を用いてゼータ電位を求める。
  • 電場を高速反転し、電気浸透流の影響がない状態で電気泳動移動度を求める。

電気浸透効果は、ゼータ電位の測定において重要な問題です。電気浸透流の影響を正しく理解し、適切な測定方法を用いることで、より正確なゼータ電位を測定することができます。

ゼータ電位の調整と活用

ゼータ電位は、コロイド粒子の安定性、分離・精製、機能性材料の開発など、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。ゼータ電位を適切に調整することで、これらの分野の技術を向上させることができます。

図2:コロイド分散液の安定性が失われる様々なメカニズムを示す模式図

ゼータ電位の調整方法としては、以下のようなものがあります。

  • 溶媒のpH調整
  • 添加剤の添加
  • 粒子の処理

溶媒のpH調整は、最も一般的で簡単な方法です。pHを調整することで、コロイド粒子の表面電荷の符号や大きさを変えることができます。

添加剤の添加は、より精密な調整が可能です。界面活性剤や金属イオンなどの添加剤を加えることで、コロイド粒子表面に電荷を付与したり、電気二重層の厚みを調整したりすることができます。

粒子の処理は、最も強力な調整方法です。コロイド粒子の表面を化学処理することで、表面電荷の符号や大きさ、表面官能基などを根本的に変化させることができます。

ゼータ電位とpH

コロイド粒子の表面には、官能基と呼ばれる化学基が存在します。この官能基は、pHによって解離したり、結合したりする性質があります。例えば、カルボキシル基(-COOH)は、pHが低い酸性溶液中では、-COO- イオンに解離します。

図3: 負に帯電した表面を与える酸性基のイオン化による表面電荷の起源

負に帯電した表面を与える酸性基のイオン化による表面電荷の起源

コロイド粒子の表面に存在する官能基が解離したり、結合したりすることで、コロイド粒子の表面電荷の符号や大きさが変わります。そのため、pHはゼータ電位に影響を与えます。

コロイド科学において、pHは重要な役割を果たします。pHによって、コロイド粒子の安定性や分離・精製、機能性材料の開発などが大きく左右されるからです。

詳細はコロイド系のゼータ電位測定ページをご参照ください。

コロイド系のゼータ電位

図4:分散が安定していると予想される緑色の領域の等電点の位置と pH 値を示す、ゼータ電位対 pH の典型的なプロット

分散が安定していると予想される緑色の領域の等電点の位置と pH 値を示す、ゼータ電位対 pH の典型的なプロット

粒子分散性とゼータ電位の相関がない例

粒子分散性とゼータ電位は、一般的には相関があるとされています。ゼータ電位が大きいほど、コロイド粒子同士の反発力が大きくなり、凝集が抑制されるため、粒子の分散性は安定になります。

しかし、粒子分散性とゼータ電位の相関がない場合もあります。その代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

粒子径が非常に大きい場合

粒子径が非常に大きい場合、その粒子自体の密度の影響を大きく受け、密度の高いものは沈降し、密度の軽いものは浮上してしまいます。この場合、ゼータ電位の大小に関わらず、粒子の分散性は安定に保たれない可能性があります。

粒子表面に立体障害がある場合

粒子表面に立体障害がある場合、粒子同士が接近しても、接触面積が小さくなるため、凝集しにくい状態になります。この場合、ゼータ電位の大小に関わらず、粒子の分散性は安定に保たれる可能性があります。

溶液の塩濃度が濃い場合

溶液の塩濃度が濃い場合、電気二重層が拡張するため、ゼータ電位は小さくなります。しかし、粒子同士の立体障害や、粒子表面の親水性・疎水性などの要因によっては、粒子の分散性が安定に保たれる可能性もあります。

このように、粒子の分散性とゼータ電位の相関は、粒子の性質や溶液の条件などによって変化することがあります。そのため、粒子の分散安定性を評価する際には、ゼータ電位だけでなく、他の要因も考慮する必要があります。

ゼータ電位の応用

ゼータ電位分析は、コロイド系が重要な役割を果たすさまざまな業界で広く使用されています。これらの業界には、医薬品、化粧品、食品、飲料、塗料とコーティング剤などが含まれます。 

これらの各分野において、ゼータ電位を理解して制御することは、製品の配合を最適化し、安定性を確保し、性能を向上させるために不可欠です。

医薬品および医療 

ゼータ電位分析は、薬剤懸濁液、エマルジョン、リポソームの安定性を評価するために、医薬品処方において不可欠です。 

粒子の相互作用を制御し、均一な分散を確保して、薬物送達システムを最適化します。 

化粧品  

化粧品業界では、ゼータ電位測定は、安定したエマルジョン、クリーム、ローションの配合に役立ちます。

有効成分の均一な分散を確保し、相分離やクリーム化を防ぐことで、製品の有効性と保存期間を向上させます。 

食品および飲料   

ゼータ電位分析は、食品や飲料の配合で、エマルジョン、懸濁液、コロイド系を安定させるために不可欠です。 

食品の食感、口当たり、外観をコントロールし、保管中の沈殿やクリーム化を防ぐのに役立ちます。 

塗料とコーティング剤 

塗料とコーティング剤では、ゼータ電位測定が分散安定性、顔料分布、膜形成に影響を与えます。 

コーティング剤の均一な色、接着性、耐久性を確保し、コーティング剤の性能と寿命の向上に貢献します。 

当社のゼータ電位分析装置

Malvern Panalyticalは、ゼータ電位、または電気泳動移動度の測定用の最先端のゼータ電位分析装置を幅広く提供しています。 

Zetasizer Advanceシリーズは、研究室/工程環境でのゼータ電位を測定するためのシンプルで高速かつ精度の高い方法と、低価格のディスポーザブルなU字キャピラリーセルを含むさまざまな種類のセルを提供します。

Zetasizerシリーズには、最先端の技術と高度な機能が組み込まれており、正確で信頼性の高い測定を実現します。 

主な機能は次のとおりです。

  • ゼータ電位値の正確な測定
  • 粒子電荷の微妙な変化を検出する高感度
  • 幅広いサンプルタイプとサイズに対応
  • 操作とデータ解析が簡単なユーザーフレンドリーなインターフェース
  • 長期的な性能と耐久性を実現する堅牢な設計

詳細については、以下の表でZetasizerのポートフォリオをご覧ください。

ゼータサイザーUltra

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世界最先端の光散乱システム

ゼータサイザーPro

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高い性能、汎用性、堅牢性

ゼータサイザー Lab

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機能が強化されたエントリーレベルの粒子径およびゼータ電位分析装置

測定タイプ
ゼータ電位
技術
動的光散乱法(DLS)
電気泳動光散乱
環境
環境 Lab - ベンチ Lab - ベンチ Lab - ベンチ