貴金属試験

貴金属採掘プロセス全体で、さまざまな種類の測定値を得るために、いくつかの分析技術が使用されています。

蛍光X線(XRF)分光法

蛍光X線(XRF)分光法は、元素組成の迅速かつ正確な試験のために貴金属業界で広く使用されている非破壊な方法です。XRFは、高エネルギーX線をサンプルに照射し、放出される特性X線を測定することで、宝石、地金、鉱石、合金などのさまざまな形状の金、銀、プラチナ、パラジウム、およびその他の元素の濃度を定量化することができます。その利点は、その速度、感度、汎用性、非破壊性にあり、貴金属分野の品質管理、探査、および研究に不可欠なツールとなっています。

X線回折(XRD)

X線回折(XRD)は、化学組成、結晶構造、結晶方位、結晶サイズ、格子ひずみ、選択配向、層の厚さなどの情報を提供する汎用性の高い非破壊的技術です。XRDは、貴金属の品質と純度を評価し、合金開発を支援し、偽造材料を特定する際に特に有用です。XRDは、その非破壊性と詳細な構造情報を提供する能力により、貴金属の試験および研究に不可欠なツールとなっています。

近赤外線(NIR)分析法

近赤外線(NIR)分光法は、さまざまなサンプルの迅速かつ非破壊的試験のために、貴金属産業でますます利用されるようになっている強力な分析技術です。貴金属試験では、NIR分光法により、鉱石、合金、宝石中の金、銀、プラチナ、パラジウム、およびその他の元素の濃度を正確に特定することができます。この方法には、その速度、非破壊性、最小限のサンプル調製要件、および現場でサンプルを分析する能力など、いくつかの利点があります。

レーザ回折法

レーザ回折法は、貴金属業界で採用が増えている高度な技術です。鉱石、精鉱、粉末などのサンプルを、瞬時に繰り返し粒子径分布測定できます。レーザ回折装置は、散乱光の強度と角度を測定することにより、サンプルの粒子径分布を正確に特定することができます。貴金属試験では、処理方法の最適化、鉱石品質の評価、製品品質の管理のために、粒子径分布を理解することが重要です。

電気泳動光散乱法(ELS)

電気泳動光散乱法(ELS)は、ゼータ電位としても知られる粒子の移動度と電荷を測定します。貴金属試験において、ELSは触媒、コーティング、電子用途で使用されるナノ粒子の安定性、分散性、および表面電荷の評価に有用です。この方法には、高感度、迅速な分析時間、最小限のサンプル調製、さまざまな溶媒中のサンプル分析能力などの利点があり、貴金属業界での品質管理および研究のための有用なツールとなっています。

Malvern Panalyticalは、貴金属採掘プロセスのあらゆる段階で業界の分析ニーズを満たす装置をご用意しています。当社の貴金属分析装置が上記の技術を特定の採掘活動にどのように適用するかについて説明します。

• Epsilonシリーズでは、XRF分光法を使用して、探査、等級管理、廃棄物管理の各段階で、鉱石、鉱物、岩石の元素組成を迅速に特定できます。
• Aeris Mineralsの装置は、既存の鉱物資源の推定、鉱石の形状と種類のモデル化、および鉱床の追跡に特化したベンチトップXRD装置です。
• ASD TerraSpecは、NIR分光法を使用して、現場の鉱石鉱物を可搬性のある方法で迅速かつ非破壊的に特定できます。
• Mastersizer 3000は、レーザ回折法を使用して不適合の粒子径分布を分析し、持続可能な採掘作業を支援します。
• Zetasizerは、貴重な鉱物の浮遊を最適化するための鉱物表面の特性評価用ELS機器です。 
• CNA クロスベルト分析計シリーズは、鉱業および石炭産業にリアルタイムの元素分析を提供します。

Malvern Panalyticalの装置を組み合わせることで、貴金属採掘のすべての段階から最大限の価値を引き出すために必要な知見を得ることができます。当社の装置シリーズの包括的な一連の技術は、プロセス全体を360°分析します。つまり、これらの装置は何が起こっているかを把握できるようにするだけでなく、プロセスの効率化、持続可能な慣行の強化、利益の増加、戦略的意思決定の情報提供など、さまざまな目標を達成できます。  

貴金属分析には、その独自の特性と用途により、いくつかの課題があります。貴金属採掘業界における最大の課題は、最高の回収率で一貫して高グレードの精鉱を生産することです。特に貴金属の高い価値と経済的重要性を考慮すると、測定の精度と信頼性を確保することが重要です。精鉱の等級は、プロセス条件、鉱化ブロック、金の分布、および硫化物、グラファイト、粘土、有機物などの希釈剤に直接関係します。全体として、貴金属分析におけるこれらの課題を克服するには、高度な装置、厳密な方法論、分析技術に関する専門知識の組み合わせが必要です。

Malvern Panalyticalは、地質、鉱物、冶金パラメータを監視するための分析ソリューションを提供します。これらを使用して、貴金属採掘事業の収益性を含む、等級ブロックの定義と採掘計画を最適化できます。当社の専門家は、あらゆる種類の業界の専門家と協力してシステム設計をカスタマイズできます。 

鉱床の高品位鉱物の枯渇が進んでいるため、採掘作業は生産レベルを維持するために低品位鉱物を大量に処理せざるを得なくなっています。XRF技術は、鉱石サンプルの元素分析を提供することにより、迅速で非破壊的なソリューションを提供し、鉱山労働者は金、銀、プラチナ、パラジウムなどの貴金属の存在と分布を迅速に評価できます。Malvern Panalyticalのベンチトップ蛍光X線分光計は、粉末中の1.5 ppmという低濃度の金を10分以内に検出できます。     

一方、NIR分光法は、鉱物の組成と変質に関する知見を提供し、貴重な鉱物と脈石鉱物の特定に役立ちます。Malvern Panalyticalでは、探査地質学者が現場や鉱山で即座に情報を安全に取得し、貴金属を含む鉱物成分ドメインを特定し、最適なプロセス条件を予測できるポータブルな貴金属分析装置を提供しています。 

近赤外(NIR)分光法に基づく当社のソリューションは、ボタンを押すだけで結果を得られます。また、Al-OHスカラーや鉱床の熱成熟度の指標であるイライトスペクトル成熟度(ISM)スカラーを使用して、地球化学的条件を追跡することもできます。

これらの高度な分析技術を探査ワークフローに統合することで、鉱業会社は資源配分を最適化し、処理戦略を合理化し、鉱石グレードの低下や複雑な鉱物組成に関連するリスクを軽減し、最終的には貴重な鉱物産業の効率と収益性を向上させることができます。 

選鉱機で貴金属鉱物を処理するには、一貫した鉱石品質が不可欠です。鉱石がコンベアベルトを通過する際、リアルタイムの元素監視により、代理鉱物に基づいて鉱石を選別します。  

コンベアベルトに沿って移動する鉱石のリアルタイムの元素監視により、貴金属鉱石を代理鉱物に基づいて選別できます。さまざまな等級の鉱石を一貫したフィードに混合することができます。鉱山は、低品位の鉱石フィードを排除することで、選鉱機の能力を効果的に高めることができます。

多くの古い金尾鉱施設では、尾鉱が高い鉱物価値を保持しており、尾鉱を再処理してさらに収益を得ることができる可能性が高まっているため、鉱山会社の関心を集めています。尾鉱ダムは環境修復の機会も提供しています。Malvern PanalyticalのCNA装置シリーズは、尾鉱と残留物の組成をオンラインで監視するツールを提供し、企業はより効率的に再処理できるようになります。

鉱石の流れは、分離と濃縮の段階で必要とされる結果に応じて変更することができます。鉱石の流れを変更するために、オンラインの元素分析装置を使用して、プロセスの各ステップで鉱物成分ドメインを特定し、鉱物組成を監視します。反応物質と試薬の混合物は、鉱物組成に基づいて調整することができます。プロセスが最適に実行されると、回収率が向上し、エネルギーと消耗品のコストが削減されます。

X線回折 は、簡単に使用でき、迅速に信頼性の高い結果を得ることのできるツールで、複雑な鉱石であっても、貴金属試験や鉱物含有量の定量化を実施できます。当社の産業用回折装置は、防塵と温度制御機能を備え、過酷な産業環境で動作するように設計されています。 

また、自動化することで、厳しい環境で自動操作することもできます。アドバイスが必要な場合Malvern Panalyticalのプロセス自動化ソリューション(PAS)グループの専門家が、お客さまのニーズに合わせてカスタマイズされた自動化ソリューションをご提案します。

Malvern Panalyticalは、鉱物定量化ソリューションを提供するだけでなく、鉱業のバリューチェーン全体を包括的にサポートします。たとえば、プロセスパラメータを直接予測できる統計ツールを提供し、短いフィードバックループを促進してプラント業務を強化します。

より具体的な考えがある場合当社の専任スペシャリストは、デジタルソリューションとプロセスの最適化に関する専門知識を持ち、オーダーメイドのソリューションを設計します。

プレグロビング

金の抽出時にプレグロビングが発生します。これは、特定の鉱物や鉱石成分がシアン化金錯体と強い親和性を持ち、金を吸収して抽出できなくなることで発生します。プレグロビング材料には、炭素質材料、有機物、その他の鉱物が含まれます。貴金属鉱石の浮遊と浸出の課題としてよく知られています。 

Malvern PanalyticalのZetasizerおよびZetium装置は、鉱物や元素の組成に加えてゼータ電位を監視できます。プロセッサは、プレグロビングを防止し、貴金属の回収率を高めるために直ちに是正措置を取ることができます。 

貴金属鉱石プロセスの一般的な作業は、活性炭の表面に吸着したAu濃度の分析です。これは、パルプ中の炭素(CIP)と浸出中の炭素(CIL)プロセスの効率に関する重要な尺度です。 

オペレータは、剥離液中の金を測定することで、溶液の金が枯渇したタイミングを迅速かつ簡単に判断し、プラントの効率を大幅に向上させることができます。当社のベンチトップXRFソリューションは、前述のような溶液の元素組成を監視するためのシンプルで低コストのアットライン分析技術を提供します。技術的知識のないオペレータでも、特別なサンプル調製、サンプルの条件設定、技術的な知識を必要とせずに、数分で結果を得ることができます。

金精錬所における装入量、スラグ、インゴット生産の最適化

装入とは、精錬所や製錬所で加工された原料の組成を指します。最も効率的な精製と製錬プロセスを達成するためには、金鉱床ごとに最適な装入が必要です。これには、各鉱床の鉱物組成に関する深い知識が必要です。 

重要な構成要素の1つは、磁鉄鉱(Fe3O4)と赤鉄鉱(Fe2O3)という鉱物に結合した鉄であり、補償のために異なる量の反応物を必要とします。以前は元素分析では、鉄の含有量の合計濃度しか明らかにできませんでしたが、現在では、X線回折で両方の相の量を容易に決定できるようになりました。この知識があれば、炉の条件を最適化でき、大幅にエネルギーを節約できます。 

当社のXRDソリューションを使用した連続スラグ分析では、結晶相と非晶質含有量を監視することにより、溶融物の効率を大幅に向上させます。さらに、金インゴット表面の炭化ケイ素とグラファイトの独自のマーキングを特定することにより、金インゴットをるつぼと鋳型にさかのぼることができます。これにより、インゴット生産プロセスのトレーサビリティと制御が可能になります。

すべての金回収プロセスでは、安全に処分しなければならない廃棄物が発生します。安全な廃棄のための主な考慮事項は、環境規制、安全衛生規制、許可要件です。これらの規制を統合すると、環境汚染を防止し、労働者と地域社会を保護し、廃棄を秩序正しく実施できます。

その結果、貴金属採掘の廃棄物は、法的問題を回避し、持続可能な採掘を確保するために、慎重に監視する必要があります。当社の専用分析ソリューションは、次のような方法で、国際規格および規制に準拠した安全な廃棄物管理を実現します。 

当社の採掘業界のお客さまは、Malvern Panalyticalのスマートテクノロジーの完全な製品を高く評価しています。当社は、鉱物探査から最終製品分析まで、50年以上の経験があり、お客さまの採掘プロセスのすべての段階に合わせたソリューションを開発できます。 

探査と抽出から、処理、廃棄物管理、出荷まで、採掘のバリューチェーン全体をサポートするインフラストラクチャと専門知識を有しています。当社のアプリケーション研修センターの、専任科学者やエンジニアの専門知識をご活用ください。また、プロセスの自動化をご検討の場合は、プロセス自動化ソリューション(PAS)グループとデジタルグループがお客さまの目標をサポートします。

当社にとって、お客さまと一緒にソリューションを開発し、カスタマイズすることは自然なことです。ハードワークが完了しても、当社の専門家はお客さまをサポートします。Smart Managerやカスタマーサポートポータルなどのデジタル機能は、情報を一元化し、リモート監視機能を有効にします。これにより、予防的メンテナンスはそのままで、必要に応じて追加のサポートを迅速に利用できます。