レーザ回折式粒子径測定装置の買替え時のデータ移行の問題点と解決策

こんにちは、みなさん!
今回は、レーザ回折式粒子径測定装置の買い替え時のデータ移行についてお話しします。

特に、その前提として、なぜ同じレーザー回折という原理の装置でもメーカーや機種によってデータが異なるのか、その理由についてご紹介します。

まずは、装置の機種ごとにデータが異なる理由について見ていきましょう。

サンプリング機構の違い

まず、装置内でレーザーを照射するまでのサンプリングの方法が異なることがデータの違いの一因です。例えば、湿式の超音波分散力の違いや循環系の偏析、乾式の分散力の違いなどがあります。

光学系の違い

また、光学系の要素もデータの違いに関与します。光源の種類や波長、検出器の位置、迷光の違いなどが光学系の要素です。

演算アルゴリズムの違い

さらに、演算アルゴリズムの違いもデータに影響を与えます。計算理論やパラメータ、逆演算アルゴリズム、データ補正処理の方法などが演算アルゴリズムに関連する要素です。

このように、数々の原因により、レーザー回折式粒子径分布測定装置には、完全な互換機は存在しません。

データ移行時に使われる「旧製品互換モード」という、新しい装置でも古い装置のデータ互換性を保つためのモードもありますが、ソフトウェア要素が同じであっても、ハードウェアに関する要素の違いによって完全な互換性が得られない場合もあるため、注意が必要です。

このため、新しい装置を用いて品質管理基準値を設ける場合、新しい装置での測定値と、最終的な品質パラメータとの相関を確認し、新たな規格を作成することが最適です。

さて、データ移行後の運用についても考えていきましょう。

・新装置で旧装置と同等の結果が得られる方法の検討

そうは言っても、旧製品使用時に決定した規格値を変更出来ない場合もあります。このような場合、新しい装置でも、旧装置と似たデータを得るための方法を検討することができます。

例えば、循環速度や超音波の加減、屈折率パラメータの変更などを行うことで、旧装置と類似のデータを得ることができる可能性があります。

計算パラメータの調整では、試料の屈折率や吸収率などが重要な要素となります。最適な値を見つけるためには、多くのパラメータを試して調整する必要があります。この作業を行う際には、「光学特性の最適化ツール」が便利です。

また、最終手段として、エミュレーション機能を用いる方法も考えられます。

エミュレーション機能は、測定結果を別の装置と同じような結果に変換する機能です。

データの10%径、50%径、90%径などに係数を掛けて変換することにより、前の機種のデータの分布中心値、分布形状に近づけることが出来ます。

変換前データ↓

変換後データ↓

エミュレーション機能を使えば、別の装置と同じ結果を得ることができますが、基本的にはサンプルの種類ごとに係数を設定する必要があります。

しかしながら、サンプルごとに作成したSOPファイルに、この補正係数を組み込むことで、手間なく別の装置と同等の測定結果が得られます。

このような方法で、データを旧装置に合わせることは可能ですが、得られたデータにより、品質管理を行う場合は、十分な数のサンプル測定による検証を行い、最終的に得られたデータおよび規格値により、良品と不良品を識別し、製品の品質を保証できるのかについて確信を得ることが必要です。

つまり、お客様自身の責任で運用する必要があります。

・運用のための手順のルール化

このようにして、最終的な測定手順が決定したら、装置の運用前に、規格値の設定やSOPファイルの作成、測定手順書の作成など、手順をルール化して一貫性を保つことが重要です。

以上が、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置におけるデータの違いの原因やデータ移行、運用についての内容です。新旧装置間のデータ調整には注意が必要ですが、適切な手順と工夫を行うことで有用なデータの取得や運用が可能となります。

お困りのことがあれば遠慮なくお問合せください。