全自動式粒子画像解析法による無機フィラーの統計的粒子形態評価に関する可能性検討

先日開催されました、プラスチック成形加工学会 第35回年次大会の発表予稿原稿です。

著作者:スペクトリス株式会社 マルバーン・パナリティカル事業部 梶原 健寛、浜田 寛之、笹倉 大督

発表ポスターは、簡単なアンケートにご回答いただけましたら、ダウンロードいただけます。

1.はじめに

プラスチックにおけるフィラーは機能性向上やコスト低減を目的に添加される粒子や粉体状の物質である。フィラーの添加により発揮される機能は様々であり、機械的強度や熱伝導性、耐熱性、導電性、電磁波遮蔽性などがあげられる。これら機能の性質はフィラーとして用いられる物質の種類のみならず、粒子径や粒子形状にも依存する。一般的に粒子径は小さいほど比表面積が大きくなるため、フィラーの効果を発揮させやすくなると考えられるが、分散性の観点をはじめ取り扱いが難しくなるとされている。一方、粒子形状に焦点をあてると、例えば機械的強度の向上を目的に添加されるフィラーは針状あるいは板状のものが多く、アスペクト比(短径軸/長径軸であり、値が小さいほど細長いことを示す。)が小さいフィラーほど効果を発揮するとされている。このようにフィラーの粒子径と粒子形状を評価し把握することは目的とする機能を発揮する上で重要である。1)

粒子の形態情報を包括的に評価する手法として、全自動式粒子画像解析法(Automated Particle Image Analysis, APIA)は有用である。本法はISO13322に準拠した手法であり、粒子径と粒子形状の同時解析を可能にしている。従来、特に粒子形状の数値化は顕微鏡観察を用いた手作業による方法を強いられてきた。これは大量の粒子情報を取得することを困難とし、かつ人に依存する誤差や解釈の違いを引き起こすといった課題があった。これらの課題はAPIA法によって解決されている。具体的には、粒子の形態情報を包括的、かつリアルタイムに全自動解析することで数千~数万個の粒子に関する諸情報を容易に取得することができ、統計的に有意な情報として比較・抽出することが可能となっている。
本報告ではAPIA法を用いて、プラスチックの機能性において重要なフィラーの粒子形態評価に関する可能性検討を行った。

2.実験方法

検討試料にはプラスチックに添加されるフィラーとして汎用的に用いられる炭酸カルシウムを選択し、中でも針状の粒子形態のものを2種類評価した。粒子形態評価にはAPIA法に基づく装置としてMorphologi 4 (Malvern Panalytical製)を用いた。試料は装置付属の乾式分散ユニットによりガラスプレート上に分散した。撮像は透過光、対物鏡倍率10倍により行った。撮像後、形状により一次粒子を選別し、15,000個以上の粒子解析を行った。

3.結果および考察

粒子径の評価
円相当径による体積基準粒子径分布をFig.1に個数基準粒子径分布をFig.2に示した。体積基準粒子径分布により、AとBの試料を比較するとBの方がやや小さく、Dv50はA:15.04 μm, B:11.04 μmであった。一方、個数基準粒子径分布により、AとBの試料を比較するとBの方が2 μm以下の微粉量が少なく、A:17 %, B:6 %であった。これらの結果より、AとBの試料をそれぞれプラスチックへフィラーとして添加した場合、粒子径の観点ではBの方がフィラーとしての効果を発揮させやすく、かつ取り扱いも容易であると推察される。

Fig.1 Volume based Particle size distribution.

Fig.2 Number based Particle size distribution

粒子形状の評価
X軸に円相当径による体積基準粒子径分布を、Y軸にアスペクト比を取った2次元スキャタグラムをFig3.に示した。この結果から、同じ粒子径であっても形状の異なる粒子が含まれていることが示された。

Fig.3 2D Scattergram.

AとBの試料それぞれについて、体積基準粒子径分布からDv10(A:8.02 μm, B:6.40 μm)より大きい粒子を抽出し、アスペクト比分布をFig.4に示した。AとBの試料を比較するとAの方がアスペクト比は小さく、平均値はA:0.437, B:0.512であった。この結果より、Aの方がより細長い粒子が含まれていることが示された。 例えば機械的強度の向上を目的にAとBの試料をそれぞれプラスチックへフィラーとして添加した場合、粒子形状の観点ではAの方がより効果を発揮すると推察される。

Fig.4 Aspect ratio distribution.

AとBの試料における代表画像として、体積基準粒子径分布およびアスペクト比分布の最頻値付近の画像をFig.5に示した。

Fig.5 Image of CaCo3

4. まとめ

本報告ではAPIA法を用いてプラスチックに添加されるフィラーとして汎用的に用いられる炭酸カルシウムの粒子形態評価を試みた。その結果、粒子径および粒子形状といった粒子の形態情報を包括的に評価することが可能であった。

参考文献:1) J.M.Adams: Clay Minerals, 28, 509-530 (1993)

出典元:プラスチック成形加工学会 第35回年次大会 予稿集


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