粒子画像分析装置モフォロギ4とパウダーレオメーターFT4のご利用事例:兵庫県立大学 柳谷先生へのインタビュー

兵庫県立大学 産学連携・研究推進機構 金属素材研究センターの柳谷先生にインタビューを行いました。金属素材研究センターでは、粒子画像分析装置モフォロギ4粉体流動性分析装置パウダーレオメーター FT4を導入いただいています。この記事では、先生が現在行っている研究内容や、どのようにご利用いただいているか、またひょうごメタルベルトコンソーシアムの活動についてお伺いしました。

柳谷先生が現在、主に行っている研究内容についてお伺いしました。

3Dプリンティング技術では、レーザーパウダーベッド方式というものが多く使用されています。その際に使用する金属粉末材料について研究をしています。レーザーパウダーベット方式に使用する材料は、ほとんどすべてといっても問題がないぐらい、ガスアトマイズ方式による粉末材料が主流です。ガスアトマイズ方式の材料がレーザーパウダーベットに採用されている理由としては、ガスアトマイズ方式の材料は球状で流動性がいいからです。また3D以外でもいろんな用途に使用されてきた実績があるからです。これにより、3Dプリンティングメーカーは、プリンター装置を開発する際に、ガスアトマイズ方式の材料を標準として使用していました。

ところが、水アトマイズ方式で作る材料は、ガスアトマイズ方式よりも安く作ることができます。というのも、水アトマイズ粉末は焼結の分野で昔から使われてきて生産性もいいからです。3Dプリンターが今後普及していくためには、それに使われる材料が安価であることが重要だと考えていました。

すると偶然にも、エプソンアトミックス社 の粉末を見ると、ガスアトマイズと同様にきれいな球状の粉末だということがわかりました。これなら3Dプリンティングにも使えそうだと思いました。現在使用しているガスアトマイズ粉末の材料と比較すると、エプソンアトミックス社の粉末は非常に似ていることに気づきました。これならもしかして3Dプリンティングに使えるかも…と思い、レーザーパウダーベッドに使用したところ、うまく使えた!というのが始まりです。

出典:水アトマイズ粉末のL-PBFによる造形と評価技術 兵庫県立大学特任教授 金属
新素材研究センター副センター長 柳谷 彰彦

調べてみると、水アトマイズの材料は主としてMIM(金属粉末射出成形法)で使用するために生産されており、表面性状に優れた製品を狙ってできるだけ球形に原料を加工しようとしているようです。その結果、それがレーザーパウダーベッドに使用できることにつながりました。

遊星ギヤ造形例

水アトマイズ粉末による造形を見せていただきました。 6つの歯車が自転しながら公転する、遊星ギヤの造形例です。6つの歯車は、後から組み込んだわけではなく造形スタート時から厚み方向に造形されたもので、外れることがないギヤで3D造形での特徴です。

先生の研究に関連してマルバーン・パナリティカルの装置はどのようにご利用いただいていますか?

粒子画像分析装置のモフォロギ4は以前使用する機会がありました。その際に粒子形状測定ができると分かっていたので使いたいと考えていました。水アトマイズ方式の材料を採用する際に、その粒子の形状を画像で見る必要があり、モフォロギ4を採用することになりました。

それだけでなく、ひょうごメタルベルトコンソーシアムの活動を通じて、他の粉末材料の物性も測定する必要が出てきました。たとえば、プラズマ溶融法で作成される材料があります。この方法では、金属とセラミックスの複合材料も作製することができ、他の方法と比較して真球に近い形状にすることができます。そうなると、円形度などの細かい粒子形状の情報が必要となるため、モフォロギで測定する必要がありますね。

また、粉体流動性分析装置FT4を使おうと思った理由は、水アトマイズ粉末の流動性を評価したかったからです。水アトマイズ粉末は、一般的にガスアトマイズ粉末より粒子サイズが小さく、流動性が悪くJIS規格の流動性試験では評価できないからです。FT4だと剪断力や粘性抵抗を定量的に測定でき、流動性の評価に使えます。これはこの装置の強みだと思います。流動性がどれくらいのレベルなのかを確認するために、FT4を利用しています。導入後すぐにコンソーシアムでの共同研究している企業からも使いたいといわれています。

実際に弊社の装置をご利用いただいたご感想をお聞かせください。

モフォロギ4のような画像解析法の装置は、正直に言って、昔は測定にとても時間がかかるという印象がありました。特にレーザー回折法と比べると、どうしても測定時間が長くなると感じていました。しかし、最近はパソコンの処理能力が向上したこともあり、測定時間が大幅に短縮されていて驚きました。また、顕微鏡の応用ということで、操作がわかりやすいですね。測定データも豊富に得られ、細かい画像解析ができるので、このコンソーシアムの活動にも非常に適していると思います。この装置も導入後すぐに使用したいという企業も出てきました。 さらに、何よりも粉末の使用量が少なくて済むという点が非常に重要です。スパチュラ程度の少量で測定が可能なので、貴重な材料を節約できることがありがたいですね。

柳谷先生と粒子画像分析装置モフォロギ4

レーザーパウダーベッドの材料では、流動性や粉末形状などの情報が重要になります。FT4では流動性を定量的に把握できるため、幅広い分析が可能です。FT4は独自のパラメーターを持つ装置で、粉末は他の粉末との比較でデータを取得することができます。相対的にデータを確認できるわけですね。FT4のおかげで、粒子の表面性状に関するデータも取得できると考えています。モフォロギ4で測定した粉末の粒子形状のデータとFT4で測定したデータと関連付けられるので、両装置を活用できるとても興味深い装置だと感じています。
 本装置を活用して得られた研究成果の一部をWorld PM2024(横浜)で研究発表します。また、11月のformnext2024(フランクフルト)でもひょうごメタルベルトコンソーシアムの合同展示ブースで研究成果の紹介をします。

今後の研究内容やひょうごメタルベルトコンソーシアムの活動について教えてください

レーザーパウダーベッド方式において水アトマイズ法に関する研究をさらに続けたいと考えています。また、このコンソーシアムの活動は、大学での研究を進める際に、造形だけでなく粉末から研究を始めようということで取り組みがスタートしました。現在は、ガスアトマイズ、水アトマイズ、プラズマ溶融方式など、さまざまな材料の研究を行っています。

たとえば、プラズマ溶融方式では複合材料を作ることも可能です。プラズマ溶融方式の材料を扱っている企業の方から相談を受け、新しい粉末を使って3Dプリンティングを行ったりもしています。今後、このような新しい材料の物性、例えば円形度や流動性を調べる必要も出てくるでしょう。

これまでにない合金組成をこの研究所で探求し、その物性を理解することは重要です。そうすることで、さまざまな可能性が広がっていくと考えています。

ひょうごメタルベルトコンソーシアムについて

金属新素材研究センター

瀬戸内海沿岸には、全国有数の金属素材製造・加工技術が集積し、「ひょうごメタルベルト」を形成しています。このような産業の付加価値化を図るために、素材の研究・開発を行う拠点として「金属新素材研究センター」が整備されました。
ここでは、次世代産業で必要とされる硬度・耐熱性・微細加工性に優れた金属粉末や3D造形技術の確立および普及を目指します。特に金属用3Dプリンターの導入・活用に前向きな中小企業を支援するために、先進技術を持つ企業と連携し、産学連携による技術支援に取り組んでいます。
コンソーシアムでは、会員に対して技術相談、経営相談、共同研究、セミナーや実習の他にもシーズ・ニーズマッチングという発表会も行っており、企業さんのPRの場、他企業さんの技術を学ぶ場として企業さんからはたいへん好評です。兵庫県に事業所がない会員様ももちろん入会、ご参加いただけますので、ご興味がある場合はお問合せください。

ひょうごメタルベルトコンソーシアム ウェブサイト

お問合せ:kinzoku@eng.u-hyogo.ac.jp

お話を伺った先生

ひょうごメタルコンソーシアム
兵庫県立大学 金属新素材研究センター
副センター長 特任教授
柳谷 彰彦先生

プロフィール
1981年山陽特殊製鋼㈱入社、金属粉末事業の立上げから関わり、2018年兵庫県立大学特任教授、2019年大阪大学招聘教授。金属粉末の研究、商品開発、実用化に従事。2016年~2021年TRAFAM理事。2019年ひょうごメタルベルトコンソーシアムを立ち上げ、現在兵庫県立大学金属新素材研究センター副センター長ならびにコンソーシアム副委員長として金属3D積層造形の研究開発、普及活動。2020年粉体粉末冶金協会3D金属積層造形委員会幹事。2010年日本金属学会技術賞、2022年粉体粉末冶金協会技術功績賞他。