AgCaVO4: 卓上型X 線粉末回析装置によ る結晶構造解析

Aeris Researchエディションを使用し、HighScoreソフトウェアと組み合わせ、粉末X線データからAgCaVO4の結晶構造を解明することができました。これにより、PANalyticalの卓上型粉末回析装置で高品質のデータが得られることが明らかになりました。

はじめに

AIBIIXO4 (AI = アルカリイオン、BII = アルカリ土類イオン、X =P、V、As)の結晶化合物は多岐にわたり、カンラン石(e.g.LiMnPO4)、アーカン石(β-K2SO4)、グレーサー石、リンケイ石、α-K2SO4、β-Na2SO4、γ-Na2SO4 [1]の8種の構造タイプに属する無数の多形相があります。リン酸塩は強誘電性と強弾性があるため、広く調査されています。さらに、LED用蛍光体としても利用できるため、リン酸塩関連物質を対象にした研究はますます増えています[2]。この結晶化合物では、バナジウム酸塩化合物、特に銀ベースの物質はほとんど調査されないままになっています。この点を考慮して、Aeris Researchエディションを使用して、一部の銀バナジウム酸塩の結晶構造の調査を開始しました。

実験方法

AgCaVO4の合成は、2つの連続した手順で行いました。最初の手順では、Ag2OとV2O5を500°Cで24時間処理し、AgVO3を合成しました。2番目の手順では、450°Cで一晩AgVO3をCaCO3と反応させました。相の純度は、原料または固溶体の存在を調査して確認しました。純粋相を、Aeris Researchエディションを使用して450°Cで1回熱処理した後確認しました。この物質の構造を解明するため、さらに分析を実施しました。2θ = 14-140°で45分間のスキャンを繰り返し実行して、24時間の測定を行いました。

Fig-1-(2)-AN20161209AgCaVO4StructureSolutionBenchtopXrayPowderDiffractometer.jpg

図1.HighScoreに実装されたSuperflipから得られたフーリエマップ。AerisResearchエディションで測定したデータを使用してAgCaVO4原子の位置を特定。

結果と考察

AgCaVO4の構造解析に必要な全手順は、HighScoreソフトウェアを使用して実行しました。ピークサーチ後、Dicvolを使用して、a ≈7.03 Å、b ≈ 5.87 Å、c ≈ 9.38 Åの斜方晶系の単位格子を検索しました。Pawley法で強度を抽出した後、ExtSymプログラム[3]を使用して、空間群を同定しました。構造モデルの検索には、図1に示すようにSuperflip [4]を使用しました。最後に、図2に示すようにHighScoreを使用してリートベルト解析を実施しました。対応する原子座標を表1に示します。

最終的な結晶構造を図3に示します。AgCaVO4は、空間群Pnma、格子定数a = 7.03255(3) Å、b = 5.86684(2) Å、c = 9.38560(4) Åで結晶化します。この化合物は、a軸に沿って走るCaO68面体の一次元鎖で構成され、VO44面体によって相互に結合されています。銀原子は構造の空隙にあります。AgCaVO4は、アーカン石構造形式を示すため、β-K2SO4と関連があります。重原子の位置だけではなく、酸素原子のような軽原子の位置も高い精度が得られることが分かります。


figure1.png

のリートベルト解析。4図2.Superflipを使用した構造解析後のAgCaVO

img3.png

図3.ac平面に投影されたAgCaVO4の結晶構造。緑がCa原子、青がV原子、ピンクがAg原子、赤がO原子を示します。

原子Wyck.xyz
Ag4c0.19623(6)0.2500000.06801(5)
V4c0.2361(1)0.2500000.3986(1)
Ca4c-0.0003(1)0.2500000.7256(1)
O14c0.5179(5)0.2500000.0258(4)
028d0.2401(3)0.5094(3)0.7935(2)
034c0.3998(4)0.2500000.5292(4)

のリートベルト解析から得られた原子座標 4表1.AgCaVO

本書の概要

Aeris Researchエディションを使用し、HighScoreソフトウェアと組み合わせ、粉末X線データからAgCaVO4の結晶構造を解明することができました。これにより、PANalyticalの卓上型粉末回析装置で高品質のデータが得られることが明らかになりました。

まとめ

X線粉末パターンからの構造解析には、有効な構造モデルを発見できる高品質のデータが必要です。Aeris Researchエディションでは、相を同定して化学反応の進行を監視するだけではなく、結晶構造を解明できる高品質データを収集できます。これは、新しい化合物AgCaVO4の例で実証されました。

[1] Isupov, V.A.(2002)。Ferroelectrics 274, 203-283

[2] Choi, S., Yun, Y.J., Kim, S.J.Jung, H.-K.(2013)。Optical Letters 38, 1346-1348

[3] Markvardsen, A.J., Shankland, K., David, W.I.F., Johnston, J.C., Ibberson,R.M., Tucker, M., Nowell, H.Griffin, T.(2008)。J.Appl.Cryst.41,1177-1181

[4] Palatinus, L.Chapuis, G.(2007)。J.Appl.Cryst.40, 786-790

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