凝集の識別は、さまざまな業界で課題と見なされています。 全自動粒子画像式粒度分布解析システムでは、形態学的パラメータに基づいて粒子を分別することで、凝集を分級できます。 画像処理に加え、分光測定を内蔵しているため、試料の凝集の種類を把握する上で役立ちます。
凝集は多くの場合、医薬品および化学業界では必要悪と見なされています。 効率的に粉末を処理するために、流動性や充填特性など、粉末の特性を変更する場合に使用されます。 その一方で、凝集は表面積や混合物の均質性などの特性に影響します。これは、最終的に製品のパフォーマンスにも影響を与えます。 [1]
製品のパフォーマンスに対する凝集の影響を考慮すると、的確かつ堅牢な解析方法で凝集を検出することが重要です。 これは、製薬プロセスを最適化して目的の製品品質を確保する戦略を策定する上で役に立ちます。
顕微鏡測定は、凝集の解析にとって理想的な手法です。 粒子と凝集の性質に関する貴重な情報は、最適な方法で試料を解析することで得られます[2]。 ただし、顕微鏡での手動観察では時間がかかりますし、結果の有効性が解析した粒子の数によって決まります。 自動粒子画像分析法は、統計学的有意性人間のバイアスから解放される一方、手動顕微鏡使用の利点はそのまま利用できるため、凝集の解析に最適です。
マルバーンのモフォロギG3とシスメックスFPIA 3000などの全自動・粒子画像解析式装置は、試料から何千もの個々の粒子を取得して記録するように構成されています。 その後、この2つの装置に付属の解析ソフトウェアが粒子ごとのさまざまな形態学的特性を計算できるようになります。 この形態学的パラメータを粒子画像と組み合わせると、凝集の識別と定量化に使用できます。 凝集の検出によく使用される形態学的パラメータは、個数基準の円相当径(CED)、円形度、周囲長包絡度です。
CEDは、粒子の2D画像と同じ面積を持つ円の直径です(図1を参照)。
多くの場合、凝集は試料内の他の粒子よりも大きな円相当径を持っています。そのため、このパラメータに基づく試料の分級は、凝集を識別する1つの方法となります。
円形度は、粒子と同じ面積を持つ円周を実際の粒子の画像の周囲長で割った割合です。 円形度の値は0~1です。 完全に球体の粒子の円形度は1、非球体粒子の円形度は1未満になります。 通常、凝集の円形度は一次粒子よりも低くなるため、円形度に基づく試料の分級は、凝集を識別するもう1つの方法となります。
周囲長包絡度は、粒子の表面粗さに関連する測定値です。 凸包の周囲長を実際の粒子画像の周囲長で割って算出します。 凸包の周囲長は、粒子の周りに巻いた輪ゴムの長さに例えることができます(図2を参照)。 周囲長包絡度の値は0~1です。 平滑な形状の周囲長包絡度は1で、ぎざぎざの形状または不規則な形状の場合、周囲長包絡度は0方向に近づきます。 通常、凝集の表面は粗いため、周囲長包絡度は低くなります。
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本記事では、上記の粒子径パラメータと粒子形状パラメータを個別に、または組み合わせて使用し、凝集を識別する方法について、例を挙げながら説明します。 また、手動顕微鏡使用による凝集検出に関連付けられた作業負荷の軽減に自動画像解析がどのように役立つかについても例を挙げて説明します。 最後に、多成分凝集を検出するためにラマン分光法と組み合わせて画像を使用する方法について説明します。
凝集した粒子は通常、試料内の一次粒子よりも大きな粒子径を持っていると予測されます。 ただし、製薬プロセスによっては、大きな一次粒子を生成する場合もあります。 この場合、粒子径(CED)と円形度のデータをあわせて使用すると、凝集となった粒子を識別することができます。
図3aは、凝集を含んでいると考えられている試料で取得したデータセットの例を示します。 円形度に対してCEDがプロットされ、散布図が生成されます。 散布図内の色の濃さは、プロットの各領域内の粒子濃度を示します。これにより、試料内のほとんどの粒子は小さく、球体であることが確認できます。 ただし、粒子が大きく円形度の低い領域がプロットにあります。 これらの粒子は、おそらく小さい粒子で構成された凝集です。
高いCEDと低い円形度を持つ粒子を選択することで凝集を分級できるかどうかを確認するには、散布図のこの領域を選択し、測定で得られた粒子の画像を確認します(図3b)。 この操作により、これらの粒子は凝集であると確認できます。 そのため、これらのパラメータを使用した分級であれば、このケースの凝集を合理的に検出できます。
多くの試料はフラクタル状に凝集します。つまり、小さな粒子がひものように連なっています。 この凝集の例を図4に示します。 こうした凝集は多くの場合、粒子間の粘着力が比較的低い懸濁液やエマルション試料の中で見られます。 その結果、形成される凝集は非常にオープンな構造を持っています。
図4のような試料では、粒子系が大きく周囲長包絡度が低い粒子を識別すると、凝集を識別して分級する手段が1つ手に入ります。 試料内の一次粒子は小さく(CEDが低く)、表面が平滑であるため(これはエマルションや粉砕した材料の場合には一般的なことです)、この方法は効果的です。 この場合、CEDが5µmを上回り、周囲長包絡度が0.993を下回る粒子を凝集と定義している場合、堅牢な分級を実現できます。これを基に、図5のように複数の異なる試料内の凝集の度合いを評価できるようになります。 各クラス内で得られた粒子の画像をすばやく確認することで、適用される分級方法が正常に凝集を分別していることを確認できます。
球体ではない一次粒子を試料が含んでいることもあります。 このような場合、粒子径と単一の粒子形状因子に基づく分級では、凝集を確実に検出できません。 代わりに、凝集を分級し、試料内の他の粒子から凝集を分別するには、複数の粒子径または粒子形状パラメータを組み合わせなければならないこともあります。
これの単純な例が図6の試料で示されています。 この試料は、粒子径が小さく、平滑で球形の一次粒子(CEDが低く、円形度と周囲長包絡度が高い粒子)で主に構成されています。 ただし、適切に処理されてないために変形した、やや大きな粒子(CEDと周囲長包絡度が高く、円形度が低い粒子)も含まれています。 最後に、フラクタル状の凝集(CEDが高く、円形度と周囲長包絡度が低い粒子)が含まれています。
ここでは、一次粒子、変形した粒子、および凝集は、各粒子の円形度と周囲長包絡度の値を組み合わせて使用して個別に検出され、分級されました。 最終的に適用した分級スキームを表1に示します。 前の例と同じく、分級方法が正常に機能していることは、各クラス内の粒子の画像を参照することで確認しました。
粒子の種類 | 分級 | サンプル粒子 |
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一次粒子 | 円形度 > 0.96 | |
変形した一次粒子 | 円形度 ≥ 0.896 < 0.96 |
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凝集 | 円形度 < 0.896 周囲長包絡度 < 0.873 |
場合によっては、試料内の一次粒子がさまざまな粒子形状や粒子径を持っているため、粒子形状や粒子径だけでは凝集と一次粒子を区別しにくいこともあります。 そのような場合、試料内で検出した粒子を粒子径の順に並べ替えると、凝集を手動で識別して分級できます。 この方法は、数学的な画像解析では分別がうまくいかない場合でも、人間の目であれば複数の異なる粒子を識別できるという事実に基づいたものです。
モフォロギG3の自動画像処理システムで得られた試料の一連の粒子画像の例を図7に示します。 これらの画像は、粒子のCEDに従って並べられています。最も大きなCEDがリストの先頭にあり、リストの最後に向かって大きいものから小さいものへと並んでいます。 粒子の画像をこうして並べると、粒子をすばやく参照し、どれが凝集に該当しそうかを識別できます。 それから各画像に手動でタグを付け、分級できます。 この場合、図7にある青い背景の粒子は、各粒子を詳細に目視で確認したユーザによって凝集としてタグ付けされました。 モフォロギG3は、試料スライド上の対象となる粒子に戻ることができます。これにより、複数の異なる画像拡大倍率または撮像法を使用して粒子を観察でき、凝集識別を支援できます。
粒子に手動で凝集としてのタグを付けた場合、さらに評価を実行し、一次粒子と凝集の分別に使用できる粒子径または粒子形状パラメータがあるかどうかを識別できます。 これにより、分画の自動化がさらに推し進められます。
図8では、モフォロギG3-ID MDRSシステムの使用で得られた粒子(黒)のラマンスペクトルを、試料に存在していることが判明している2つの純成分(原薬(API)1とAPI 2)のライブラリスペクトルに重ねたものを示しています。 この粒子は、凝集の可能性がある粒子径と粒子形状を持っているとしてラマン解析で選択されたものです。 粒子スペクトルをAPI1とAPI2のスペクトルと比較した結果、両方の純成分に関連する特徴を備えていることが分かります。 これにより、粒子は多成分凝集(MCA)であることが確認されます。
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MDRSなどの手法では、統計的に有意な数の粒子を解析し、粒子径、粒子形状、およびスペクトルに関する情報を得ることができます。 粒子のスペクトルを純成分のスペクトルと比較すると、試料全体を分級できます(図9参照)。 これには、試料の凝集度の測定値を取得することが含まれます。
各粒子クラスに対応する図9の粒子の画像により、このケースにおける凝集識別に関連する問題が分かります。 純成分とMCAは、よく似た粒子径と粒子形状を備えています。 これは、ラマン分光法による粒子径の測定と粒子形状の測定の組み合わせで、凝集分級スキームの定義が可能になります。
凝集の識別は、さまざまな業界で課題と見なされています。 凝集では、流動性、表面積、溶解速度などの粉末の特性が変わる可能性があり、最終的な製品の品質に影響する可能性があります。 凝集を識別するために、適切で確実な解析方法が必要になります。
全自動粒子画像解析システムでは、形態学的パラメータに基づいて粒子を分別することで、凝集を分級できます。 MDRSの場合、画像処理に分光測定を組み合わせると、粒子の化学組成を識別できるため、試料内で発生する凝集の種類(同種間の接着か異種間の接着か)を把握する上で役立ちます。 これらの手法を組み合わせて使用すると、統計的に関連する粒子の母集団をすばやく解析し、凝集を効果的に識別して分級できます。 そのため、この手法を使用すると、凝集の堅牢な解析方法を確立できるため、製品品質の一貫性を確保する上で役に立ちます。
Maryam Maghsoodi, Katayoun Derakhshandeh and Zahra Yari, "On the mechanism of agglomeration in suspension", Advanced Pharmaceutical Bulletin, 2012, 2(1), 25-30
Gary Nicolas, Stephan Bynard, Mark J. Bolxham, Joanne Botterill, Neil J. Dawson, Andrew Dennis, Valerie, Nigel C. North, John D. Sherwood, "A Review of the Terms Agglomerate and Aggregate with a Recommendation for Nomenclature Used in Powder and Particle Characterization", Journal of Pharmaceutical Sciences, VOL. 91, No. 10, October 2012