ポリアクリルアミド(PAAm)は無極性の炭化水素主鎖と高極性のアミド側鎖を持ち、イオン性と水素結合性があるために特性評価が難しい。 このような特異な性質を持つため、PAAm は排水処理や油井の破砕、ゲル電気泳動、土壌調整、増粘剤、充填剤などの用途で、ヒドロゲルとして極めて有用である。
サンプル ID | MZ (Da) | Mw (Da) | Mn(Da) | Mw/Mn | IV (dL/g) | RH (nm) |
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注入 1 | 1,509,000 | 996,865 | 647,378 | 1.54 | 2.64 | 32.6 |
注入 2 | 1,448,000 | 967,012 | 624,114 | 1.55 | 2.61 | 32.7 |
平均 | 1,478,500 | 981,939 | 635,746 | 1.55 | 2.63 | 32.7 |
相対標準偏差(%) | 2.9 | 2.1 | 2.6 | 0.32 | 0.81 | 0.22 |
PAAm 試料は、あらかじめ希釈したものを、ゲル電気泳動製造メーカーから入手した。 SEC/GPC システムViscotek TDA305 を使用して、この試料を分析した。 このユニットには、屈折率検出器、粘度検出器、90°光散乱検出器(RALS)および7°低角光散乱検出器(LALS)が搭載されている。 各試料を 100uL ずつ 2 回注入し、水・有機溶媒混合移動相の流量を 1.0mL/ 分として溶出させた。 ViscoGEL C シリーズカラム 2 本で分離を行った。クロマトグラフィーによる分離と検出の間、温度は 30 ℃に保った。
PAAm をサイズにより分離するには、カラムと移動相の両方を最適化する必要がある。 アミド基には正電荷があるため、ポリカチオン性の多孔質充填剤を用いて逆相イオン反発カラムによる分離を行なった。 系内が完全にイオン化するように、また両親媒性の PAAm の溶解状態が保たれるように、水/有機溶媒混合移動相を使用した。 図 1 は、分子量約 100 万 Da の PAAm 樹脂のマルチ検出器クロマトグラムを示している。 4 つすべての検出器で、優れた SN 比と分子量分布の分解能が得られている。 検出器の信号から得られたデータを表 1 に示す。 2 回の注入間の分子量分布の再現性から、この方法の精度が優れていることが分かる。
高度な検出機能を用いることで、固有粘度と流体力学半径の測定から構造情報が得られる。 図 2 は、2 回の注入時の Mark-Houwink プロットの重ね書きである。 このプロットは、分子量によって固有粘度が変化することを示している。 このプロットから導き出されるパラメータから、ポリマーの構造、形状、密度を知ることができる。 このデータは優れた再現性が認められる。 このプロットを利用して、OmniSEC ソフトウェアにより高度な分岐解析を行うことができる(図 3)。 Mark-Houwink パラメータが分かっている線状 PAAm 標準試料と未知の試料を比較する。 2 つのプロットは低分子領域では重なり、この領域では分岐がないことを示している。 分子量が高くなると、未知試料の曲線が平らになり始める。これは、分子量が高くなると、より高密度の構造となることを示している。 つまり、重合が進み高分子量の鎖になると、少量の分岐が存在することを示唆している。
また、高分子量における、線状サンプルとの固有粘度の差は、架橋結合、コモノマー供給比、あるいは重合メカニズムの変化を示している場合もある。これらはすべて、合成手順によってモニターし、制御することができる。
ポリアクリルアミドは、各種工業用途あるいは医薬品用途で広く利用される商品ポリマーである。 その親水性と膨潤特性により、機能性ヒドロゲル成分としてよく使用される。 その両親媒性とイオン性のためにクロマトグラフィーによる分離が理想的に行えず、これまで PAAm 樹脂を高度な SEC/GPC 検出により分析することは難しかった。 Viscotek の 3 段検出 SEC/GPC は優れたサイズ排除クロマトグラフィーシステムであり、高度な検出機能により、分子量と分子の大きさを重要な性能パラメータと関連付けることができる。