ITCユーザー様、ITCご購入を検討中のお客様を対象とした、オンライン「ITCワークショップ2021」の録画版です。
◆このページは「招待講演①モダリティ創薬研究におけるITC(東京大学大学院 教授 津本 浩平 先生)」です。
モダリティ創薬研究におけるITC
90年代以降、サイトカインや抗体などの蛋白質医薬がアンメット領域を中心に急速に発展しました。近年では、アンチセンス核酸を始めとした核酸医薬、CAR-T等の細胞医薬、そして再生医療の研究開発がさかんです。標的の生物学に的確に対応した創薬モダリティの選択肢が提案され、その幅も広がっています。
疾患関連分子を標的とする創薬では、その分子に関する記述が重要になります。次に、その知見をもとにした創薬には、精緻なターゲットバリデーションが重要です。その際、モノクローナル抗体を調製し解析することが多く、場合によっては、この抗体分子そのものが治療薬あるいは診断薬として開発対象になる場合もあります。抗体の標的分子への結合様式を精査することにより、標的分子の特性を理解するだけでなく、低分子あるいは中分子創薬における標的部位を実際に見出せる場合も少なくありません。これらの研究にITCがとても重要な役割を果たしています。
次世代抗体医薬品開発の進展も顕著です。抗体をいわゆる薬物送達のツールとして用い、薬剤を標的部位に送達させるAntibody-Drug Conjugate(ADC)の開発が一定の成果を収めているほか、がん免疫療法の位置づけが著しく向上し新しい段階に入っていること、さらには血友病治療薬としてのBispecific抗体の上市など次世代抗体開発もいよいよ本格化しています。 以上のように、モダリティ創薬において抗体工学研究は新しい段階を迎えています。そのための基盤となる技術開発研究もますます重要な位置づけになってきています。標的親和性の向上、VHH抗体の活用、二重特異性抗体の開発等はその一例でしょう。これらの研究開発において、ITCは不可欠なものになっている、といっても過言ではありません。本講演では、以上に関する最近の状況を、我々の研究成果も含め紹介し、今後を議論します。
東京大学大学院 教授 津本 浩平 先生 ご略歴
- 1991年東京大学工学部工業化学科卒業。同大学院工学系研究科化学生命工学専攻にて博士(工学)取得。
- 東北大学大学院工学研究科、東京大学大学院新領域創成科学研究科を経て、現在、東京大学大学院工学系研究科教授、同医科学研究所教授、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所創薬デザイン研究センター長。
- 主な受賞として、日本生化学会奨励賞、日本学術振興会賞等。
発表者
東京大学大学院 教授 津本 浩平 先生
ご略歴
1991年東京大学工学部工業化学科卒業。同大学院工学系研究科化学生命工学専攻にて博士(工学)取得。
東北大学大学院工学研究科、東京大学大学院新領域創成科学研究科を経て、現在、東京大学大学院工学系研究科教授、同医科学研究所教授、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所創薬デザイン研究センター長。
主な受賞として、日本生化学会奨励賞、日本学術振興会賞等。