ITCユーザー様、ITCご購入を検討中のお客様を対象とした、オンライン「ITCワークショップ2021」の録画版です。
◆このページは「招待講演② アプタマー研究におけるITC(千葉工業大学 教授 坂本 泰一 先生)」です。
アプタマー研究におけるITC
近年,創薬モダリティとして核酸医薬品が注目されている.様々な核酸医薬品がある中で,私は,タンパク質を標的としたアプタマー医薬品に興味を持ち,研究をおこなってきている.アプタマーは,Systematic Evolution of Ligands with EXponetial enrichment (SELEX)法という進化分子工学的な手法によって得られる核酸分子であり,抗体医薬品と同様に標的タンパク質の立体構造を認識して結合する.その結合能については,解離定数が数pM以下になるものもあり,私は,なぜアプタマーが非常に高い結合能をもつのか明らかにしたいと考えた.
また,核酸分子,特にRNAは血中で分解されやすいため,アプタマーを医薬品とする際には,アプタマーを化学的に修飾する必要がある.現在は,経験に基づいて化学修飾し,活性が保持されているか試行錯誤がおこなわれている.低分子の医薬品の開発のように,アプタマー創薬においても,立体構造および物理化学的情報に基づいて化学修飾を行うことができるようになれば,アプタマー創薬の効率が飛躍的に上がると思われる. 本講演では,主にRNAアプタマーと標的タンパク質の相互作用解析の研究例を紹介する.私たちは,柔軟な構造を持つアプタマーが,標的タンパク質の分子表面にフィットすることによって,非常に高い結合能と特異性を有していると考えており,ITC実験はそれを強く示唆していると考えている.また,試料の調製からITC実験,特に強い結合の解析に必要な競合法などの実験手法についても紹介したい.この講演を通して,ITCの有用性と発展性について議論したいと考えている.
千葉工業大学教授 坂本 泰一先生 ご略歴
- 1997年 横浜国立大学大学院 博士(工学)
- 1997年 三菱化学生命科学研究所 特別研究員
- 1998年 千葉工業大学 研究員
- 2002年 東京大学医科学研究所 産学官連携研究員
- 2004年 千葉工業大学 工学部 講師
- 2016年 千葉工業大学 先進工学部 教授 現在に至る
- 2010年 Conformational plasticity of RNA for target recognition as revealed by the 2.15 Å crystal structure of a human IgG-aptamer complex, Nucleic Acids Res. Featured Article.
- 2013年 Solution structure of a DNA mimicking motif of an RNA aptamer against transcription factor AML1 Runt domain, J. Biochem.論文賞